ARCHIVE: 2020年02月16日  1/1

『眠り姫の恋』Ⅱ

『眠り姫の恋』Ⅱ  その優子からの興奮気味の涙声を聞いたのは、小雨の続く八月の夜だった。 「万里江、大変! 大変よ!」  長袖がちょうどいいほどの冷夏で、電話で呼び出されたわたしはパステルカラーのレインコートを羽織って、待ち合わせたファストフード店へと出向いた。  街は若者や通勤通学帰りの人たちでごった返している。  植えられた街路樹からは野性的な夏の香りが漂い、わたしはドキドキと胸をと...

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