『眠り姫の恋』Ⅰ

こんにちは、Eimiです。
今日は蘇芳環さんの『眠り姫の恋』を掲載します。
短いものですので、最後までお付き合いいただけると幸いです。
thOEIV6JP1.jpgthOEIV6JP1.jpg


     『眠り姫の恋』Ⅰ

                                  蘇芳 環  著

 

わたしの親友の小野優子は眠り姫と呼ばれている。


小学校、中学校、高校とそのあだ名は一貫されていて、就職して社会人になってからもそれは変わらなかった。

なんといっても入社一日目のあいさつで「趣味は眠ることです」と、堂々と言ったほどで、その日の夕方掛かってきた彼女からの電話では、再三聞かされてきた彼女のを再び長々と聞かされることとなってしまったのだった。


「だって、万里江、そう思わない?」


 優子の饒舌の始まりの決まり文句だ。

 そう思わないかと聞かれても、わたしはこの十五年来の友人の眠りに対する考えに賛同したことは一度もない。ただ思わないという返事を期待しているわけではないだろうからいつも沈黙を守っている。


「眠るときって快感でしょう。ううん、眠ってしまってからじゃないの。眠りに墜ちるその過程がいいの。ベッドに横になって頭がふわあっとすると、手足が先の方から融けていくみたいに力が抜けていくの」


そんなのよく覚えていないと思う。


「ううん、まだまだ眠るのは先よ。それからぽおっと温かくなって胸が熱くなるの。そしたらもうフワフワの綿にくるまれてるみたいに気持ちよくなるじゃない。だから、それから一時間くらいはじっくりとその快感を堪能するのよ」


 そのを聞く度、あなた、充分に変質者の素質があるわ、と心の中で繰り返している。

 彼女の眠りの快楽説は続く。


「それで、あんまり気持ちいいから、部屋に鍵かけて思いっきり楽しむの、裸になってね。時々声まで漏れちゃうから、絶対他人と一緒の部屋では眠らないようにしているのよ。本当は一日中でもそうしていたいのだけどダメなの。どうしても二時間以内に眠りに墜ちてしまうの。悲しいわ。万里江はどう?」


 わたしはまともに返事をしたことはない。

 ただ、彼女は自分を変わり者などと決して思っていないらしく、午後七時の就寝時間を守り通している。

 たいそうな美女なのにもったいない。

 実際、色白で華奢な彼女に憧れる男は多かった。


 物静かで笑顔が上品で、優雅な雰囲気は深窓の令嬢そのものだし、わたしの今の彼氏もかつては彼女に心寄せる青年の一人だった。でも、ともかく、どんな男も彼女の就寝時間を壊すことなど出来なかったのだ。


「だって万里江、そう思わない?」


 彼女は言う。

「恋愛なんてつまらないわ。デートなんて楽しくないわ。男の人と会話するなんて、話題を探すのに疲れるだけだわ。そんなの無駄よ」


 美女はベッドに横たわり、悩ましい姿であはん、うふん、とやっているのに、永遠にそのベッドの中は彼女一人で占められるというのだ。青春もなにもあるものか。



DSCN1842_convert_20191106224325.jpg


『眠り姫の恋』Ⅱへ続く



DSCN1612_convert_20191031235015.jpg


こちらもどうぞよろしく~


DSCN1610_convert_20191031234729.jpg

このブログの案内の頁はこちら

押して頂けると喜びます+゚。*(*´∀`*)*。゚+

ありがとうございます。☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆




関連記事
スポンサーサイト



COMMENT0

LEAVE A COMMENT